ダイヤモンドの査定については、押さえるべき幾つかのポイントがあります。ここでは、それらのポイントについて解説します。
ルーペを使用するときに、利き目を使っていますか?
自分の「利き目」はどちらかご存知でしょうか?もし、どちらの目なのかわからない場合は、近くにある時計を指さしてください。そして指をさしたまま片眼を閉じて、時計を指さしていればそれが利き目です。逆に、ズレて指していた場合はそれは利き目ではありません。
なぜ利き目が大事かというと、ルーペを使用する際に、どちらの目を使うかによって見方が変わってくるからです。必ずご自身の利き目を把握した上で、利き目を使ってルーペを使用するようにしてください。ちなみに私は左目ですが、たまちゃんは右目のようです。
ダイヤモンドの「4C」とは?
ダイヤモンドを査定するにあたって必ず確認するべきポイントは、カット・カラー・クラリティ・カラットの4Cです。1つずつ見ていきましょう。
カット
ダイヤモンドのカットの評価となるのは、58面体のラウンドブリリアントカットです。正面から見て対称性があるか、横から見てガードルの厚さと均一性を見ます。リングなどの場合は確かに横から見づらいところではありますが、ガードルの厚さはカットの評価において非常に重要です。評価はExcellentが最も高く、Very Good(VG)、Good、Fair、Poorの順です。
カラー
無色透明で最も高い評価が「D」であり、それ以降E、F、Gの順に徐々に黄色くなっていきます。見た目による判断であるため、経験がなければ判断しにくいところではあります。また、イエローゴールドの製品は地金がダイヤモンドに移りこんでしまうため、査定においては評価を下げて査定する必要があります。
また、蛍光性についてもブラックライトで確認します。ブラックライトを照らして青く光る場合、蛍光性が強いと言えますのでカラーの評価と関連して蛍光性の評価をしなければなりません。蛍光性が強いダイヤは、評価は低いです。特にメレダイヤがついたリングなどの商品を査定する場合は必ず蛍光性も確認しましょう。メレダイヤ全体の何パーセントが蛍光性が強いのかを確認します。
クラリティ
内包物や傷、くもりなどを10倍ルーペを使用して確認します。FLが最も高い評価であり、そこからIF、VVS1、VVS2、VS1、VS2、SI1、SI2、I1、I2、I3の順に、内包物の有無によって評価を見極めます。ルーペを使用しなくても肉眼で確認できるのであれば、SI1以降の評価となります。
カラット
重量のことです。1ctにつき0.2gです。当然、大きければ大きいほど評価が高くなります。刻印の表記がないルース等の場合、ダイヤモンドゲージで測定します。稀に偽物の刻印もありますので、刻印を鵜呑みにせずまずはダイヤモンドゲージで直径を測定するのがいいでしょう。
鑑定書について
ダイヤモンドを証明するための書類が「鑑定書」です。鑑定書の有無によって査定価格が大幅に変動するわけではありませんが、鑑定書があればより確実に査定することができるのは確かです。
鑑定書と鑑別書
よく聞く「鑑定書」と「鑑別書」。この2つについては明確な違いがあります。「鑑定書」についてはダイヤモンドに対してのみ発行されます。一方「鑑別書」はダイヤモンド以外の色石等に対して発行されます。ですので、サファイアの鑑定書といったものは存在しません。鑑定書=ダイヤモンドです。
鑑定書の種類
鑑定書の発行機関(鑑定機関)が信頼できるかどうかによって、鑑定書の信頼性が異なります。鑑定機関として最も有名なのが「中央宝石研究所」です。私も自社で買い取ったダイヤモンドや色石を持ち込んで鑑定書や鑑別書を発行してもらったことが何度もあります。しかし、そんな中央宝石研究所発行の鑑定書でも、2006年4月以前に発行された鑑定書は、評価が甘かった時代であるために鑑定書としてのランクも下がります(金色のシールが貼ってあるものがそうです)。
中央宝石研究所以外の鑑定機関としてAGTやGIA、DGLなどがあります。数多くの鑑定機関が存在しますが、まずは鑑定書と現物が同一であるかをしっかりと見極める必要があります。鑑定書を鵜呑みにしてはいけません。
鑑定書と現物との同一性
まずはカラット数などの刻印を確認しましょう。そして鑑定書の写真と現物に相違がないかルーペで確認します。鑑定書の写真がきれいでクラリティの評価が高くても、経年により外傷が増えたりすれば当然クラリティの評価も下がります。
ダイヤモンドの特徴
硬度が高い
ダイヤモンドは他の石に比べて硬度が高いため、カットの面が鋭利です。ただし、靭性は高くない為、ハンマーなどによる衝撃を与えると粉々に割れてしまいます。
屈折率が高い
例えば紙にボールペンで線を書き、その上にルースのダイヤモンドを置いた場合、ダイヤモンドの高い屈折率により線が見えなくなります。
希少価値が高い
ダイヤモンドに限らず、希少価値の高いものは金額も高くなります。天然ダイヤモンドを採掘するコストなどを含めると、ダイヤモンドが高額になるのは致し方ありません。その一方で、地金はその日の相場により左右されますが、ダイヤモンドの相場は大きく変動することはあまりないと言えます。リセールバリューの高い商品といえるでしょう。
ダイヤモンドの査定を悩ますポイント
ダイヤモンドの査定における基本は「4C」ですが、4Cさえマスターすれば完璧ですか?査定の現場において、悩ましいポイントもいくつかありますのでご紹介します。
類似石
キュービックジルコニア
ダイヤモンドと比べて硬度が低い為、カット面が鋭利ではなく、なんとなくだれている、エッジが丸いのが特徴です。また、屈折率が低い為、新聞紙の上にルースのキュービックジルコニアを置いた場合、透過して文字を読み取ることができます。ダイヤモンドは屈折率が高い為、透過することはできません。ちなみに、ダイヤモンドに息を吹きかけても曇らないのに対し、キュービックジルコニアの場合は2秒ほど曇った状態が続きます。
キュービックジルコニアはダイヤモンドより虹色に輝くのが一つの特徴であり、当然ダイヤモンドよりも安価ですが見た目が似ていて、輝き方も綺麗に見えるため、テレビショッピングなどでも紹介されています。査定に持ち込まれることもあり得ます。基本的にはマルチテスターで対応できます。
モアッサナイト
硬度・屈折率ともにダイヤモンドと同等の高さがあります。しかし、エッジが二重に見えるのがモアッサナイトの大きな特徴といえます。また、10倍ルーペで確認すると細い針のような形状をした内包物があるのも特徴です。これらの特徴は、ダイヤモンドにはありません。キュービックジルコニアと同様に、マルチテスターで判別の対応ができます。ちなみにマルチテスターは、テーブル面に対して直角に測定子を当てなければなりません。
人工ダイヤモンド
近年中国で国を挙げて製造されているのが人工ダイヤモンドです。こちらは、マルチテスターでもダイヤモンドとして反応してしまいます。天然ダイヤモンドと判別することは非常に困難であると言えます。
レーザードリルホール(LDH)
ダイヤモンドの内包物を除去するために行われる処理が、レーザードリルホール処理です。これは、レーザーによりダイヤモンドに小さな穴をあけ、内包物を焼灼するか、強い酸を流し込んで内包物を目立たなくする処理です。あくまでクラリティの評価をあげることを目的とした処理ではありますが、鑑定書にもレーザードリルホール処理に関する記載がされる場合もあり、全体的な評価は下がります。
怪しい買取依頼人
査定の基本は、「モノを見る前にヒトを見る」ことだと思います。想定できる「怪しい買取依頼人」のチェックリストは以下の通りです。
遠方からわざわざ来店する
他県ナンバーの車での来店は要注意といえるでしょう。また、身分証明書の提示の際でも遠方から来ているかどうかは判別できます。
身分証明書が写真の無いもの、あるいは偽造パスポート
運転免許証以外の身分証明書は、偽造の可能性があります。まずは写真付きの身分証明書で、必ずコピーを取りましょう。
必要以上に急かす
すぐに現金化して逃げることを目的としているため、大体急かします。急いで査定する必要はありません。「大切なお品物なので慎重に査定させていただきます」といった具合に伝えるようにしましょう。
預かり査定を認めない
偽物の場合、預かり査定で偽物であることがバレます。即現金化することを目的としているため、預かり査定を拒否します。本物であれば基本的に拒否されません。遠慮なく預かり査定を促しましょう。
本物と偽物を持ち込む
本物を先に査定させ、偽物を後から追加し、本物だけを持ち帰り、偽物だけを置いて買取させようとします。そのような商品の出し方をする場合、鑑定士の様子を見られていると思ってください。
査定中、席を外して電話する、あるいはスマホをずっといじっている
組織的な犯行であることがうかがえます。自分自身のものであればそんなことをする必要はありません。商品を持ち込んだ人物と決裁権者が異なるのかどうかをヒアリングなどで判断しましょう。
ダイヤモンドは奥の深い世界
ダイヤモンドの鑑定については経験がものを言います。数多くのダイヤモンドの鑑定機会を得て、現物に多く触れることが大事です。特にクラリティのやカラーの評価などは経験がものを言います。貴金属の査定だけであればさほど難しくはありませんが、ダイヤモンドの鑑定ができるようになれば売り上げを大きく伸ばすことができます。臆することなくチャレンジしましょう!