古物営業をこれから始める!という方にとって、営業所をどこで登録しようか?あるいはそもそもここは営業所として登録できるのか?といった疑問はあるかと思います。そこで、これらの「古物商許可証の取得が可能な事務所・物件」についてお伝えします。
ネットショップだけでも営業所の登録は必要?
よくある質問の一つとして、「自分はネットで仕入れてネットで販売する、インターネットの取引だけで完結するので、営業所の登録は必要ではないのでは?」という質問を受けることがあります。結論から申し上げますと、ネット取引だけで完結したとしても古物商許可証の営業所の登録は必須です。
古物商許可証の営業所として登録できる物件とできない物件、条件付きで出来る物件があります。一つずつ見てみましょう。
様々なオフィス形態
レンタルオフィス
レンタルオフィスとは、業務に必要な設備があらかじめ供えられたオフィスのことです。物件によっては受け付けにコンシェルジュが常駐しているところもあります。一般的な賃貸物件よりも初期投資を抑えることができ、入居してからすぐにビジネスを開始することができます。
さて、そんなレンタルオフィスで古物商許可証の営業所として登録するためには、以下の条件があります。
レンタルオフィスの運営会社からの承諾を得る
まず、運営会社からの承諾が得られなければスタートラインにも立てません。事前に必ず確認しましょう。
占有スペースを確保でき、独立性を保てる
後述するコワーキングスペースやシェアオフィスのようにオープンなフロアに簡易パーテーションで区切っただけ、といった形状では独立性を保たれているとは言えません。古物の保管や古物商プレートの提示ができるような個室タイプのオフィスが望ましいです。
バーチャルオフィス
バーチャルオフィスとは、会社の住所を貸すサービスです。利用者はあくまで住所を借りているだけなので、その住所で営業をしているわけではありません。つまり、営業実態が存在しない為、バーチャルオフィスを古物商許可証の営業所として登録することはできません。
例えば「出張買取専門店」として古物営業をする場合、自宅の住所を登録したくないが故にバーチャルオフィスの住所を古物商許可証の営業所として登録する…といったことはできません!そこで古物営業の実態がなければ警察署としても古物商許可証の営業所として認めるわけにもいきません。
コワーキングスペース
コワーキングスペースとは複数人が場所を共有して作業を行うオフィスです。ここではあくまで「共有」という概念があり、「個別」「個室」といった概念とは真逆です。図書館のようなイメージでしょうか。従ってコワーキングスペースは古物商許可証の営業所としてはふさわしくありません。
シェアオフィス
レンタルオフィスと少し似ていますが、レンタルオフィスには個別の占有スペースがあるのに対し、シェアオフィスには「シェア(共有)」というだけあって占有スペースは基本的にありません。会議室を借りたりすることはできたりもしますが、古物商許可証の営業所として大事なことは、古物の保管や古物商プレートの提示ができるような独立性が保たれた物件であるということです。
集合住宅
集合住宅は居住用として使用・賃貸することが前提です。それ故、集合住宅の一室を古物商許可証の営業所として登録する場合、それなりの手続きは必要です。大きく分けて「自己所有物件」か「賃貸物件」かによって手続きが異なります。
アパート
自己所有物件
建物登記簿謄本が必要になります。法務局にて取り寄せます。自己所有物件のアパートが、集合住宅を古物商許可証の営業所として登録する場合において最もハードルが低い(揃えるべき書類が少なくて済む)といえます。
賃貸物件
建物登記簿謄本に加え、大家または不動産管理会社より「使用承諾書」が必要になります。これは、「居住用」として借りた物件であるため、その物件において事業を行っていいかどうかの承諾を得る必要があります。それを認める大家もいれば認めない大家もいます。本当にケースバイケースです。承諾を得ていないのに古物商許可証の営業所として勝手に登録すると後で必ずトラブルになります。
マンション
自己所有物件
アパートの自己所有物件は建物登記簿謄本だけで足りましたが、マンションの場合はどうでしょう。マンションによりけりですが、例えば「マンション管理組合」や「マンション理事会」が存在する場合、それらから承諾書を得なければなりません。自己所有物件であったとしても、です。「管理規約」の中には大体「居住専用」「営業活動の禁止」の文言が記載されていることが往々にしてあります。ですので、基本的にアパートよりもマンションの一室を古物商許可証の営業所として登録することは難しいことが多いのです。
賃貸物件
上記の「マンション管理組合」や「マンション理事会」からの承諾書に加え、大家または不動産管理会社からの承諾書も必要になるかもしれません。最もハードルの高いケースであると言えます。
また、上記の書類以外にも賃貸借契約書などが必要になる場合があります。各都道府県により必要書類が異なる場合があるため、必ず事前に確認する必要があります。
公営住宅
市営住宅や都営住宅などの「公営住宅」を古物商許可証の営業所として登録することは、ほぼ不可能です。理由はやはり「居住用」として貸し出されていることが前提となっており、使用承諾書を得ることが困難だからです。マンションの場合はマンションの管理組合や大家から承諾書を得ればいいのですが(それだけでも十分困難な話ですが)、公営住宅の場合、貸主は「地方自治体」です。市営住宅なら市、都営住宅なら東京都です。それら地方自治体から使用承諾書を得ることはほぼ不可能です。ただし、管轄の警察署によっては使用承諾書を必要としないところもあるため、やはり事前に確認する必要はあります。
戸建て住宅
自己所有物件
自己所有物件の戸建てはアパート同様に書類が最も少なくて済みます。ただし、名義に注意してください。建物の名義が親族のものになっていたり夫婦共有になっている場合は、別途建物所有者からの使用承諾書が必要な場合があります。あなたの戸建ては単独所有ですか?共有ですか?それとも賃貸ですか?
賃貸物件
賃貸借契約書や大家からの使用承諾書が必要となります。
使用承諾書について
上記のものは警視庁の古物商関連ページよりダウンロードしたものですが、書式は基本的に自由です。各都道府県の公安委員会によりけりなので、各々の古物商関連ページに書式がある場合はそれをダウンロードして使用してください。要は大家から承諾を得られていることが確認出来ればそれでいいのです。
主たる営業所等届出について
2020年4月1日に改正古物営業法が施行されました。今までは複数の都道府県にまたがって営業していた場合は営業所ごとに各々の管轄警察署に届け出なければならなかったところ、2020年4月1日からは「主たる営業所等届出」を主たる営業所の管轄する警察署に提出することにより、複数の都道府県にまたがって営業していたとしても1か所の警察署で管轄することになります。
自宅を古物商許可証の営業所として登録した場合の注意点
仕事とプライベートの境目があいまいになる
これは現在、テレワークなど在宅勤務をされている方も多いかと思うので実感されると思います。強い気持ちで自分を律しないとなかなか上手くいきません。いわゆるオンとオフのスイッチの切り替えが難しいのがテレワークなど在宅勤務です。
プライベートのスペースが少なくなる
リユースのビジネスは物販です。仕入れ商品や梱包材、それらを保管する棚など結構なスペースを取ります。写真を撮影する機材などを使用するとなると更に場所を取ります。そうなると必然的にプライベートのスペースが少なくなります。
警察署の立ち入り検査がある
古物商許可証の営業所として自宅を登録する以上、管轄警察署より立ち入り検査がアポなしで入る可能性があります。自宅でのんびり過ごしていたところにいきなり警察官に立ち入られたりするとなると別に何も悪いことをしていないのにもかかわらず心中穏やかではありません。特に自分以外の家族にとっては非常に驚いてしまいます。でも古物商許可証の営業所として自宅を登録する以上、それは仕方がありません。
取引相手とトラブルになった場合が大変
ヤフオクやメルカリなどの取引相手とトラブルになった場合、自宅を古物商許可証の営業所として登録している場合、取引相手に自宅住所を知られてしまいますのでこれも心中穏やかではありません。
確かに自宅を古物商許可証の営業所として登録するとなるとランニングコストは抑えられますが、それに伴うリスクも必ずや存在します。その上で古物商許可証の営業所をどこに登録するかをよく考えましょう。
結局、マンションの使用承諾書は必要なの?
賃貸マンションの一室を主たる営業所として登録する場合、マンション管理人からの使用承諾書は必要ですか?
2020年4月より法改正がありまして、使用承諾書は必須書類ではなくなりました。ただし、あらかじめマンション管理人より使用許可を取っておくとベストです。
マンション管理人の立場からすると、例えばマンションの敷地内に無断で看板を設置したり、不特定多数の人がマンション敷地内をウロウロしたりすると迷惑千万なので、そのようなことさえ起きなければ基本的に問題ないはずです。
しかし、管轄の警察署の古物担当の方によっては未だに使用承諾書を必須としている場合もあります。こちらとしては当然のように「2020年4月より法改正があったのはご存知ですよね?」と聞きますが、それでも頑なに使用承諾書の提出を求められる場合がたまにあります。その場合は「仕方なく」使用承諾書を提出するより他ありません。私がわざわざ「仕方なく」と書いたのは、上記の通り2020年4月より法改正があったため、使用承諾書は本来提出書類としては不要であるはずだからです。
そんな担当にあたったら嫌ですね~
私も嫌ですよ。弊所にご依頼される方のために私もいろいろ策を練りますが、最後は人対人なので、如何ともしがたいところがあります。もしどうしてもマンション管理人の使用承諾書が必要になった場合、一度ご相談ください。直接交渉はできませんが、策はあります。
ちなみに賃貸ではなく所有物件である場合はどうですか?
所有物件の場合は賃貸よりもハードルが低いです。ほぼ間違いなく取得できるはずです。ただ、いずれにしても他のマンション住民やマンションの建物・敷地に対して迷惑をかけないことは前提条件となることを必ず忘れないようにしてください。
その他の注意点
自宅を古物商許可証の営業所として登録するのは抵抗があるので、実家を古物商許可証の営業所として登録しようと思うのですが、何か問題はありますか?
自宅ではなく実家を古物商許可証の営業所として登録する場合、実家に管理者を置かなければなりません。古物商許可証の営業所とは、実際に古物営業・古物取引が行われる場所です。そこには申請者とは別に管理者を設置しなければなりません。もちろん申請者と管理者は同一でも構いませんが、自宅から離れた場所に実家がある場合、実家の誰かに管理者になってもらわなければなりません。また、古物商許可証の営業所たる実家に管轄警察署から立ち入り調査が入ることがあります。それ故、自宅ではなく実家を古物商許可証の営業所として登録することは物理的には可能ですが、特に家族間において色々とハードルがあるかもしれませんね。
私の現在の住所と住民票記載の住所が違っていても古物商許可証の申請はできますか?
やむを得ない場合がない限りできません。原則として住民票記載通りの住所を申請するようにしてください。ちなみに住民票の住所を変更する場合は、住所が変更になってから14日以内に役所に対して住民票の住所変更の申請をしなければならないので注意してください。
一つの営業所に対して複数人が古物商許可証の申請することはできますか?
原則できません。ただし、親族共有の一戸建て等を古物商許可証の営業所として登録し、親族は各々で古物商許可証を申請する、というようなケースであれば認められる場合もあります。これはケースバイケースです。基本は1営業所につき1管理者であることを忘れないで下さい。
トラックやキャンピングカーなどを営業所として登録することはできますか?
できません。営業所は住所がなければなりません。つまり建物でなければならず、トラックやキャンピングカーなどの車両は不動産ではなく「動産」です。
ただし、仮設店舗の営業届を提出すれば、トラックやキャンピングカーなどの車両においても買取や販売など古物営業ができる可能性があります。例えばレストランや喫茶店の駐車場を借りて、トラックやキャンピングカーなどの車両を仮説の査定会場として古物営業を行う、等のようなことも可能になりました。しかし、仮設店舗の営業届を提出すれば必ずトラックやキャンピングカーなどの車両において古物営業ができるわけではなく、各都道府県の公安委員会の判断に依ります。